主に使用している材料はウォールナットとチェリーですが、マルケッティ社は自然破壊をしない様、伐採時期を満たした植林材を使用しております。
ウォールナットのなんともいえない温かみのあるまったりとした質感。黒く流れる木目が美しく、家具全体のツヤは濃く 深く、輝きを放っている。まるで森の中の大木のように強く大きな存在感でうったえかけてくる。
そんな1300年代のキャビネットに出会ったのはイタリア・フィレンツェのホーン美術館でした。ホーン美術館は、イギリス人のコレクターであるハーバート・パーシィー・ホーン(Harbert・Parcy・Horne)のコレクションを収めた中世邸宅の面影が残る小さな美術館です。
そのキャビネットには、幾重にも塗り重ねられたワックスの跡が、筋や溜りとなって黒く残り、さらに奥深さを感じさせてくれました。 気のいいイタリアンマンマ風のお手伝いさんが、毎日、毎日、気の遠くなるほど手間をかけて埃を払い、ワックスで磨き上げる光景がふっと思い浮かぶ、そんな手入れ跡でした。
木は生きています。本物の素材を用いて心ある職人によって生まれた家具は、ホーン美術館で見たあのキャビネットのように、700年の歳月を経てもなお気高い光を失うことがないのです。
マルケッティ社の最初に作られた小さなリーフレットには、こんなことが書かれています。
私たちは樹木を愛しています。大きく豊かに育っていく木の成長を見守るのは、嬉しく楽しいことです。そうして慈しんできた木を伐採してしまうのは、ほんとうに悲しく、残念でなりません。しかし、だからこそ私たちはその木に敬意を払い、本物の家具を造ることに力を注いでいます。植林材は、伐採時期を満たしたものだけを伐採し、その後ちょうど良い時期にちょうど良い数の木を植栽します。このエコシステムによって生まれた森は、自然のそれと寸分違わず美しい森となります。時間とともに、使い込むほどに味わい深さを増す、そんな良質の素材を使って家具造りができる喜びを、この上なく幸せだと感じています。
工場の敷地内に在庫されている材木です。常に3年分の材木がこの状態で保管されます。板にひいた段階で3年間自然にさらすのです。これは狂いの少ない家具を作るために大事な工程です。この後、人工乾燥機に入れ含水率9%になるまで乾燥機の戸をあけしめしながら、3日間程度乾燥させます。
人工乾燥の後、雨や夜露にかからない屋根の下で、さらに6ヶ月間保管します。無理やり乾燥させた材木を、自然の環境になじませる行程です。含水率は最終的に13%ぐらいに戻します。マルケッティ社はこの工程を自社で一貫して行っている、イタリアでも信頼の厚い家具製造メーカーです。